5:何を使って、どう描くか? 専門的な学習経験がないMassyの描き方。
・時には写真の力を借りる
・文章を添える
・線の試行錯誤
・Massyの工夫
時には写真の力を借りる
描き方で最も基本的なものは、対象である風景や建物を目の前にして下描きと着彩まで行い、一枚の絵として完成させることです。しかし人通りが多かったり、時間がなかったり、急な天候の変化でそれができない場合も多くあります。
そんな時、助けになるのが写真です。
描こうとするアングルで対象を撮影し
・自宅に帰りパソコンモニターに画像を出し、訪れた時の印象が薄れないうちに仕上げていきます。
・下描きだけを現地で行い、帰宅してからゆっくりと着彩する方法や、
・現地ではスケッチも着彩もせず、描きたい構図を想定しで何枚も撮影し、帰宅後1枚を選んで、
それを見ながら描き始める自称「ロケーション制作」という方法も時として使います。
その際、使用しているカメラが上の2台です。上はコンパクトデジカメCanon G5X、1 眼レフのようにファインダーに接眼して撮影できるのが特徴です。下の機種はフィルムカメラのKonicaⅢです。1958(昭和33)年製のクラシックカメラ。
例えば神戸の異人館など、絵を描く対象がノスタルジックなものの場合など、仕上がったプリントを通して時代の空気が伝わってくるような気がして、その場でスケッチしているような気持ちで描けます。
これは自分だけの感覚なのですが…。
スケッチの旅に持っていくカメラをその時だけ簡単気軽にレンタル。
それは、現地に行かず、最初から最後まで写真を見ながら仕上げてしまうことです。
事情で写真を見て描く場合でも、一度は現地に行ってしっかり見ておくこと。そして描くときは、できるだけ現場の空気を思い出し、感じながら絵にすることにしています。
実際に見たことも、味わったこともなく描くことは、やめておきたい。
これは、納得の絵にするため、自分に課したルールです。
文章を添える
せっかく絵を描くテーマを設けたので、描いた対象になぜ惹かれたのか、思いや、言われ、描いたあとの感想などを、できるだけ短い文にして添えることにしました。
なぜ絵を描くか、それは「感性を磨くため」、というような大層な目的を据えたので、文を作ることも、それに繋がりそうと考えた結果です。
芸術家による美術作品は見る人の感性を刺激し、人それぞれの解釈を求めるものです。
比べるのもおこがましいのですが、私の「こころ絵」は、芸術とは異なり、思い出を確かめ、残したいとか、永く続いている老舗と商品を応援したいなど、自分自身の何らかの意図を含んでいます。
その上で絵と文で何かを伝えること、考えてみるとこれは私が長く手掛けてきた商業美術、つまり広告や編集の作りと同じだと気付きました。
長く広告で生きてきたことが、どうしても出てくるものです。そしてこの作り方を将来マイスタイルにまで育てることができれば嬉しいと思っています。
線の試行錯誤
マイスタイルで言えば、水彩画で線の使い方のに定まったルールはないとも考えています。
着彩して仕上がった時には
・下絵としての線は見えない描き方のもの、あるいは
・仕上がった時、適度に主張をする鉛筆での線を残す描き方、また
・マーカーやサインペンなど濃いの線でがっしりとした輪郭線で仕上げていく描き方。
こころ絵での描き方は、仕上がったとき、このうち、全く線が見えない描き方はしていません。というより、修行が足らずうまく描けないのです。これを、やらず嫌いというのかもしれませんが…。
ということで、主に2つの描き方、線の使い方をしています。
以下は鉛筆を使ったものとマーカーを使ったのもの、2つの例です。
これは、JR大阪環状線「大正駅」からしばらく歩いた、尻無川の風景で、シャープペンシル、0.9mm 濃さBのもので描いたもの。
下は同じ風景をマーカー(SAKURA スケッチペン 耐水性 創業100 年のカワチ画材店で購入)で描いたもの。
このスケッチペンは濃茶のものと黒のものの2タイプがあり、雰囲気のよい濃茶を使っています。このスケッチペンは多くのラインマーカのように先端が細く丸くなっておらず、いわば四角い先をカッターで切ったように、太い細いが角度で使い分けできるようになっていてとてもありがたいペンです。
主に使うツール:左からSAKURA スケッチペン、Pentel シャープペンシル0.9mm B 、つけペンとして使用しているLAMY 万年筆。インク容器。
Massyの工夫
マーカーに代えて、独特の線のタッチを出そうと耐水性インクを使い、万年筆をつけペンにして描くことにも挑戦しました。
耐水性インクは種類があまり多くなく、選んだのは開明株式会社から出ている「まんが墨汁 純黒」です。
ただし、このままで描くとどうしても黒が際立って、線が主張してしまいます。もともと漫画のために作られているのですから。
そこで少量を別の容器に移し、スポイドで水を加えて薄めて使います。
濃さは60% 程度になるよう水の量を調整するのが、いいニュアンスになるかと思います。 このあたりは徐々に水を加え、好みのところでストップ。なので正確な%は不明です。
ポイントは水彩画が持つ独特の柔らかさを損ねないよう薄めて使う、というところです。
それぞれの下絵に着彩し、仕上げたものが以下の2点、AとBです。
鉛筆の線を生かして描いた A
SAKURAスケッチペンで描いたラインが強調される描き方 B
どちらが良いかではなく、対象や時には気分でどちらかを選んで描くというのが今日段階での自分自身の答えです。
でも、極めていきたいのはやはりA です。難しさでいってもやはりA。以前、風景をA で描いたのですが、どうしても落ち着かず、その上からマーカで線を乗せることで仕上げ、何とか見られる絵にすることができた経験があります。
対象を見つけ、心が感じたことを表現するために、
鉛筆、筆、マーカー、インクなどを使い分けし最も適したツールでチャレンジしてみることも、絵を楽しむ方法の一つだと思います。
ツールに独自の工夫を加えたり、時にオリジナルなもの、例えば竹や割り箸を削ってペンのようにして描くなども楽しいことです。これも水彩画の奥深さゆえのことでしょうか。
私は道具を収納し、携帯でき現地で画板のように使える専用Skech Box をDIY しました。機会を見てご紹介します。
【まとめ】
・写真をもとに書くこともあるが、一度も現地に足を運んだり、直接目でみたことのないもの、全て写真から描くことは自身のNGとしている。
・感性を磨くため、描いた対象から受け取った感覚を文章で表し絵に添えること。それはまさに広告づくりから学んだこと。
・線を描くことは難しい、今は線をギリギリまで生かさない方法と線を強調する方法の2通りで描いている。極めたいのは前者。
・まんが用の墨汁を薄めて柔らかに線を描くことも工夫の一つ。