2:何を描く?:あれこれ思いつくままに描くからテーマを決めて描くへ。
ゆっくり、長く、水彩画を描く楽しみを続けていきたい。こんな時、さて何を描いていくのか? この答えを見つけることは、易しくありませんでした。
例えば近郊の風景、季節に合わせて咲く庭や公園の花、由緒ある古い建築、色とりどりの果物や野菜、ガラスや陶器などの静物、身近な可愛い小物たちなど…。
堅苦しく考えず、その日の気分で描きたいものを決めればいいよ。いや、そうではなく一貫するテーマを設けることで描き続け、深めることができるのではないのだろうか?
考える中で決めたのは、テーマを設け、それに則したものを描くということでした。
なぜテーマが必要か?そしてそれは何なのか、は後のコーナー「描く絵のテーマ」でまとめています。
描くという行為は見たものをそのまま紙の上に再現することではなく、見たときの「印象」、そのとき「感じた何か」を紙の上で再生させることかと思います。
同じように仕上がった絵も、感じた何かを強く意識して描いたものと、何気なく写しとったものは自ずと違うものに思えます。
そして「感じた何か」を言葉にしたもの、それがテーマになります。
テーマは、良いテーマ、よくないテーマ、高尚なテーマ、低俗なテーマなどと評価する対象とはならないと考えています。
私の場合、水彩画を描くにあたって、見て描きたくなった対象からテーマを導くのではなく。テーマをあらかじめ決めておき、街を歩いたり、旅したりときにそのテーマに会うと感じたものを描く対象として選ぶということを心がけています。
つまり描こうとするものからテーマを導くか、決めたテーマを探して描くか、の違いです。
出張先の横浜で出会った横浜開港記念会館。 通称Jack。時代を超え存在するものへ心惹かれ、
スケッチ。後に、テーマの一つを決めるときの決め手になった建物。
私は後者の、予め決めたテーマをもとに描く対象を選び、描くことをしています。
テーマを頭に入れて街を歩くと、テーマに合う景色が自ずと目に入ってきて、ああ、これを描こう!と対象が決まります。
こういったことは、日常でもよくあることで、例えば新しい靴を買いたいと思いながら街を歩くと、素敵な靴を履いた人とその靴に自ずと目がいってしまう、などです。
では、このテーマを何にするか?ですが、これを決める前にクリアしておくことがありました。
それは、そもそも「なぜ絵というものを描きたいのか、描くのか?」という根本的な問いに答えを見つけることです。